[00:18.90]銀杏(いちょう)がえしに [00:21.86]黒繻子(くろじゅす)かけて [00:25.57]泣いて別れた すみだ川 [00:32.08]思い出します 観音さまの [00:39.24]秋の日暮の 鐘の声 [00:55.19]「ああそうだったわねえ、 [00:58.18]あなたが二十、わたしが十七の時よ。 [01:02.76]いつも清元のお稽古から帰って来ると、 [01:06.71]あなたは竹谷の渡し場で待っていてくれたわねえ。 [01:11.34]そして二人の姿が水にうつるのを眺めながら [01:16.30]にっこり笑って淋しく別れた、 [01:21.28]ほんとにはかない恋だったわね……。」 [01:27.03]娘ごころの 仲見世歩く [01:33.92]春を待つ夜の 歳の市 [01:40.86]更けりゃ泣けます 今戸(いまど)の空に [01:47.81]幼馴染(おさななじみ)の お月さま [02:14.74]「あれからあたしは芸者に出たものだから、 [02:18.62]あなたは逢ってくれないし、 [02:21.35]いつも観音様を お詣りする度に、 [02:24.25]廻り道してなつかしい隅田のほとりを歩きながら、 [02:30.13]ひとりで泣いていたの。 [02:32.83]でも、もう泣きますまい、恋しい、恋しいと思っていた [02:39.85]初恋のあなたに逢えたんですもの。 [02:43.17]今年はきっと、きっとうれしい春を迎えますわ……。」 [02:51.82]都鳥さえ 一羽じゃとばぬ [02:59.04]むかしこいしい 水の面(おも) [03:06.07]逢えば溶けます 涙の胸に [03:13.12]河岸(かし)の柳も 春の雪